マルメロのふりをした果実

"Fake it till you make it."

赤い夢の迷宮

ーー全ては、赤い夢の中の出来事。


『赤い夢の迷宮』 勇嶺薫


ジュブナイルミステリー作家が大人向けに書いたクローズドサークル系のミステリー。
主人公たちが小学生のころに通っていた、不思議な男の館への招待状が届き、25年ぶりに再会するという話。

残念ながら私はミステリー作家の小説を推理しながら読んだことはないのだけれど。笑
はやみねかおるさんの作品と出会ったのが2007年で、この本が出版されたのもその頃だったので存在は知っていたけれど、大人になったら読もうと決めていた作品。
最近まで本を読む生活から離れてしまっていてずいぶんと時間がかかってしまいました。

内容は噂通りの容赦のなさ。
他の作品では誰も死ぬことがなくハッピーエンドで終わるので、それとのギャップがすごい。
ただ、小学生時代のわくわく感、未知の存在への好奇心はいつもどおりで、状況も想定しやすく読みやすい。

この作者のすべての作品は、赤い夢という共通の概念をもっていて、世界観を共有しています。
自分が一番平凡でまともだと思っている主人公とか、家族の名声に囚われたくない人とか、生きている人のはずなのに人間味の無い存在とか、少し未来を見る能力とか、醒めない夢とか。この作品でも他の作品と共通するものが感じられました。
いつもはそこに「ひんやりとした感触」があったりするんだけど、ここではぬるく感じるくらい。笑
そんな、はやみねかおる作品で育った人が読んでこその衝撃と魅力があります。

誰もが持っている心の闇をつつくような物語。
最後の2行をどうとらえるかで結末がかわる。
読者までもが赤い夢の迷宮に迷い込んでしまうかもしれない。






どこまでが現実で、どこからが空想なのか、確証はどこにあるのか。

私は、自分が持っている情報に対して、それが本当に見聞きしたことなのか、夢の中で知ったことなのか、頭の中で作り出したことなのか分からなくなることがあります。
本当だったんだと、忘れないようにと反復して思い出していくうちにも、少しづつ頭の中で書き換えられていってしまう。
どうやって確かめたらいいんだろう。
どこまで確信をもっていいんだろう。




赤い夢の迷宮 (講談社文庫)

赤い夢の迷宮 (講談社文庫)